帰りは、なんとなく違う道を選んで歩いた。最近よくそういう気分になる。見知らぬ路地をゆくと感じの良いカフェと古いタバコ屋を見つけた。カフェにはスーツ姿の男性ときれいな女性がこちらを向いて並んで座っていた。なんだか気後れがした。タバコ屋では、見たこともない緑のパッケージのラッキーストライクを見つけた。1916年発売当初の復刻版のようだった。店のおばさんに「これください」と指を差して声を掛けたが「あんたそんなもんもうないわな、はいばんはいばん」と返されてしまった。ひとつじゃきっとすぐになくなってしまうからと、「ふたつください」と言った自分が恥ずかしかった。


目に入るものすべて符号。