いくら会話を交わしても。
体に触れても。
時間やそこに流れる空気を共有しても。


知り得ないものがあること。
行けないところがあること。
見えないものがあること
すら思い出せないこと。


ロスト・イン・トランスレーション
翻訳で、失われるもの。


「何をやればいいのかわからないの」
「写真を撮ろうとしても面白くないものばかり」
「女の子は誰でも写真に夢中になるの」
「自分の足とかくだらない写真ばかり撮る」


「私意地悪なの」


「きみは絶望的じゃない」


エンディングロールに、聴き馴染んだメロディーが流れる。
夜行バスから見た、白んだ東京の空を思い出す。


笑い合える瞬間
体の中に同じものが流れたと思える瞬間
人との出会いは束の間
自分に光を見せてくれるけれど
生活の倦怠や見失った自分を変えて欲しいと
期待した途端、
何かが取り返しのつかない方向に
じりじりと進んでいくのかもしれない。


私が肩にかけた手は、
いつの間にか振り払いたくなるような重さに
なっていたのかもしれないな。


でも出会ってしまったことに
意味がなかったと悲観するのはまだ早い。
これからの長い時間、
また二人が交錯する瞬間があると信じたい。


今度来るそのときには、
そっと腕を回してハグするよ。



今日の一曲「風をあつめて」はっぴぃえんど