耳の穴に舌を差し込むと、微かに苦い味がした。
無精髭で首を攻められて、恥ずかしいほど我を失う。


痛まない胸、ときめかない心。
さほど開かない身体。


色欲に流されたのか、何かを演じたのか。


忘れられない表情。


相手が何を思っていようが、そんなのどうでもよかった。


ただ見たかった。触りたかった。


こんなの全然大したことじゃない。なんでもない。裸で抱き合うことがセックスを意味するなら、ねえこんなの、まったく取るに足りない事だと思ったよ。私は、そのとき隣にいる人に応えたい。隣に、というのは「精神的な支えとして自分の傍に」という意味の比喩ではないよ。その瞬間、自分の横に座っているその人の事だけを考えていたい。誰も大事なんだよ。みんなが好きだよ。手を繋ごうよ。キスしようよ。抱き合おうよ。必用なことを、きみが望むだけしたいよ。


あんなにやさしくされたことはなかった。
ありがとう。



そしてもう忘れた。


今日の一曲「オンリーワン」ゆらゆら帝国