「美しくない」


手の内全部見せ合うことで踏み外さないようにしてるとか滑稽なあ。言わなけりゃいいのに。
とことん正直な話をするのってこんなにしんどいのか。
恋に限らず、あらゆる選択や意志決定の瞬間において、
それでは果たして今まで何のどこまでが雰囲気や感情操作に左右されない、
振り返ってイエスが出せるものだったかなんて。
そんなもの無いんです。


どれだけ節操のない下半身なんだ。一瞬。
でもその軽蔑は浮ついた期待をあっさり裏切られた悔しさ。
何を潔癖な振りを。自分だって目の前の男に欲情するくせに。
女の私はそれに恋をこじつけるだけタチが悪い。
「一生、ちゃんと人と付き合うことなんて出来ないよ」
自分のセリフが負け惜しみに聞こえる。


したくないんですは言いたい、
でもしたいんだよと見せてほしい、
だけどしたいだけではいやなんです
って、なんなんだよそれ。


「美しいことをなしえたことなどないのです。」
彼も私もきっと等しく共感し溜め息をついてはやり過ごしてきたんだろう。


私の舌がもっと薄ければ、切れ味の良い会話ができれば、
しなやかな身体だったなら、声がもっと低ければ、
素直に甘えるかわいさがあったなら、さばけた性格をしていたならば。


がっかりし直してもらうのが一番だ。
まだまだどこにもいけない。