顔や姿がきれいだったから、好きだったんじゃない。
物腰のやわらかさや、人に言って恥ずかしくない学歴を、好きになったんじゃない。


お箸をかたちんばに並べてしまう、
財布をどこにやったかすぐに忘れて出掛ける前はいつも探してる、
そんなところが、とても好きだったんだよ。


ああ、細めた目で、笑ってる。
あんまりやさしい顔で見るから、恥ずかしくて思わず目を逸らしてしまう。
あんな顔で人の話に相槌を打てるひとは、そうそういないよ。



ちっともいいものじゃなかったのに、私のことをあんなふうにしてくれた。
ありがとう。
本当に嬉しかったよ。
大げさかな、私は手を握られるたび、体に触れられるたび、
自分自身を受け入れてもいいんだって
過去や、コンプレックスを、許してもいいんだって
そんな気持ちがしていたんだよ。


うなじの細く柔らかい髪、
自分とは違う口蓋のひだ、
煙草を持つ指の節、
くすぐったい髭、
絶えず微かな笑みをたたえる口元、
もの憂げに丸めた背中、
首もとの少しいびつなほくろ、
自転車でこけたときの傷、
かぶりつくときの仕種、
照れたときの癖、
とてもゆっくりな歩幅、


してくれたこと、
見た景色、
教えてくれた気持ち、
流れた音楽、





流れた音楽




大丈夫、だって音楽は残る。




今日の一曲「My Girl」SUPERCAR